コラム

命涯(かぎ)りあり知は涯りなし⑭

命涯りあり知は涯りなし

人にはそれぞれの生き方があり、人生にはドラマがある。私もいつの間にか86歳になった。
ふと、あと何年生きられるかと思うことがある。必死に生きてきた私の半生を書いてみたい。

⑭「三心」を忘れずに生きる

 敗戦後、台湾引き揚げから間もなく両親を亡くした私は、昼間は薬局で働きながら高校の夜学を卒業した。そして昭和32年4月、一般社団法人倫理研究所へ入所後、同じ職場で勤務していた妻と結婚。男ばかり6人の子を育てながら、倫理活動の普及に奔走(ほんそう)した。

警察学校での講演の感想

 倫理普及に情熱を注ぐなか、刑務所や少年院、警察学校からの講演依頼がたびたびあった。平成12年~平成16年に警察学校で行った講話『いい生活よりいい人生を』では、警察官の卵である受講者から多くの感想文が届いたので、その一部を紹介したい。
◆初任科169期(S・S)
 人間は決して一人で生きることはできません。生まれたときから、いろいろな人に支えられ、出会い、そして愛されてきたわけです。これまで私に携たずさわってきた人たちに感謝したいです。
 先生は三つの心(初心、良心、公僕心)を大切にしてくれとおっしゃっていました。まさにその通りだと思います。これから人間として警察官として生きていくためには、なんで警察官を志したかという初心を忘れてはいけないし、常に良心を持って地域住民と接していかなければなりません。
 また警察官として社会生活上、守るべき道徳である公徳心を常に持っていなければいけないでしょう。とにかく人の痛みのわかる人間になり、さまざまな困難に立ち向かっていける、鉄の精神力を身につけたいです。
◆初任総合科56期(Y・K)
 先生の話を聴かせていただき、人はやる気になれば、なんだってできるのだということが身に染みてわかりました。これからの学校生活を死にものぐるいで頑張り、各検定試験、学校の試験、武道に全力で挑み、立派な警察官になりたいです。
◆初任科170期(A・U)
 先生は「自分に誇れる人生をおくってほしい」と言われました。この言葉が自分を勇気づけてくれました。他人から見て、カッコ悪いことでも、自分が自分自身に誇りを持って行うことなら後悔しません。私はいつかまた先生のお話を聴きたいです。そのときまで、いい人生をおくっていられるように毎日、頑張っていきたいと思います。
◆初任総合科56期(M・S)
 自分も警察官としてようやく一年間が過ぎました。これからどんな逆境にあっても、先生が言われた〝三心〟つまり「初心」「良心」「公僕心」を常に忘れず、適切な職務執行をしていきたいと思います。そのためには日ごろから、この〝三心〟を心に刻み行動していきます。警察官として必要な心構えを先生の実体験を通じ学ぶことができ、非常に勉強になった講演でした。
 警察学校には3度も伺い、どなたの感想文を拝見しても、実に純心で警察官としての誇りと使命がみなぎり、若い情熱を注いで学んでおられる姿に心から尊敬と敬服の念を深めた。根底に国民を守るという気迫を感じ、日本の将来に大きな希望が見えて、心から嬉しい出会いであった。

市原刑務所での講演

 平成20年6月13日、市原刑務所で400人を対象とした講演を行った。
 市原刑務所での刑期は平均11.4カ月。罪名は「業務上過失致死」「業務上過失傷害」(人身事故)が61.5%、残り38.5%は道路交通法違反。違反内容・事故原因では飲酒運転が60.6%、無免許運転が36.1%を占める。前歴で交通事犯前歴のある者は94%、事故歴のある者は37%。年齢は平均35.3歳である。
 テーマは『人生は再出発の連続・反復』――つねに活路あり――過去と他人は変えられないと知るべし。わが人生の悲劇、あの日、あの事さえなければ……と後悔した体験の数々。
●飲酒運転による事故
●スピードの出し過ぎによる事故
●居眠り運転による事故
●その他
 日本全国で走る凶器による交通事故は毎日どこかで起きている。小学生のころから「注意一秒、怪我一生」という言葉も学んだはずだ。しかし、どんなに悔やみ、嘆き、悲しんでも過去は取り戻せない。それよりも、自己中心的で自立心がなく、誘惑に弱くて生活にだらしなかった自分を注視し、戒め、反省することに尽きる。それが交通事故減少に必ず役立つはずとの思いでたびたび講演を行った。
 何度かお伺いするうちに教職員の方とも懇意になり、年中行事にも出席するようになった。
●市原矯正展(刑務作業製品展示即売会)――木工品をはじめ見事な作品芸術展には感動させられた。
●納涼盆踊り大会――準備万端、櫓(やぐら)づくり、照明器具、衣装にも配慮され、祭をもり上げて、みんなで楽しんでほほえましい。大東京音頭、炭坑節、市原踊りのあとはプロによる歌謡ショー、各婦人会からの模範踊りと続き、時がたつのも忘れるほどだった。
●運動会――個人や団体戦、アトラクションがあって、日ごろのエネルギーを爆発させ、どの顔も嬉々(きき)として輝いていた。
 私はふと、家族との団らんを思い出す受刑者もいるのではないかと思い胸が熱くなった。四男のレース事故を思い出したからである。平成4年8月15日の夕方のことだった。

木村重男さん木村重男(きむらしげお)
1933(昭和8)年生まれ85歳
一般社団法人倫理研究所 参与。
文部科学大臣から社会教育功労賞を受賞。著書に『夫婦の玉手箱』『豊かな人生を拓く玉手箱』など多数

 

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