インタビュー

輝く人108 中井貴一さん

輝く人 中井貴一さん

演じながら「生きている」ことを実感。これが私の生きる場所
シリアスからコミカルまで、さまざまな役を自在に演じ分ける、日本を代表する実力派俳優・中井貴一さん。38年の俳優人生を振り返り、俳優に目覚めたきっかけ、演じることへの熱い思いを伺いました。

赤面症の私が俳優の道を選んだわけ

――俳優になったきっかけを教えてください。

 私は、大学在学中に映画『連合艦隊』(1981年東宝)で俳優デビューしました。でも当初は、これが自分の生涯の仕事になるとは夢にも思っていませんでした。子どものころから赤面症であがり症だった私は、人前に出ることが大嫌いだったからです。にもかかわらず、このオファーを受けたのは、ひとえに社会勉強のため。これから社会へ出ていくために、いろいろな経験を積んでおくべきだと考えたからです。私は幼いころに父を亡くしているので、父親というものがよくわかりません。おそらく男の子というのは、働く父親の背中を見て、自分の将来を思い描いていくのでしょうが、そうした経験ができませんでした。だから、いざ就職について考えると、とにかく知らないことばかり。かといって、身近な相談者もいなかったので、何事も自分でやってみるしかないと悟ったのです。当時は、俳優はもっともあり得ない選択でしたが、ものは試しでチャレンジしました。

思い切ったチャレンジの中にいまへとつながる発見があったのですね?

 そうですね。まず不思議だったのは、カメラの前では顔が赤くならなかったこと。つまり俳優をやるうえで、赤面症が弊害になることはないとわかったんです。考えてみると、子どものころにやった学芸会もそうでした。人前が苦手な私は、いつも舞台の隅にいる役を懇願していましたが、現実に回ってくるのは目立つ役ばかり。腹をくくって舞台に上がると、その開き直りが功を奏して、何とかやり通せたのです。そんな経験がよみがえってきました。そして、ありがたいことにその映画がヒットしてくれて、その流れで次の出演作品も決まり、この世界に入り込んでいったわけです。そのうち演じながら、「生きている」ことを実感するようになりました。始まりのカチンコが鳴り、終わりのカチンコが鳴るまでの間こそ「自分の生きる場所」。自分の感情を発散させて、自分が自分らしくいられる場所だと気付いたんです。

「○○じゃない」を貫くのがポリシー

俳優の仕事で楽しいと感じるのはどんなときですか?

 38年俳優をやっていますが、実は、俳優が楽しいと思ったことは1度もないんですよ。むしろ、しょっちゅう壁にぶち当たって、大変で苦しいことばかり。なぜなら俳優という仕事は、自分の満足とそれを観る人の満足が必ずしも一致しないからです。簡単にいうと、自分では最高の演技ができたと思っても観客がしらけていたり、逆に、自分ではイマイチだと思っていても観客がすごく感動してくれていたり……。常に全力投球でのぞんでいますが、その努力が報われるとは限りません。そうした不条理をどう穴埋めしていくかが俳優の仕事のもっとも難しいところですね。

演じるうえで大切にしていることはありますか?

 1つは、「俳優=職人」であること。大工さんが設計図を見て家を建てていくように、俳優は脚本を見て演技で作品を立体化していきます。このとき、作り手の思いを汲み、黙って組み立てられるのがプロなのでしょうが、私は不器用なのでそれができません。気持ちが伴わなければ演技ができないので、わからないことや疑問に思うことは徹底的に話し合うようにしています。そうした意味では、面倒くさい職人と思われているかもしれません(笑)。そして、もう1つは、俳優として常に「○○じゃない」立場であり続けること。日本人は、皆同じであることに安心感をもつ人種だと思います。人気があるもの、支持者が多いものになびく傾向がありますよね。でも、私はそうはなれません。世の中にはいろいろなものがあってしかるべき、という自分の考えを貫くためにも、あえて大きな流れを避けることが、私の俳優としてのポリシーです。

これからをどんな風に生きたいか、また読者にメッセージをお願いします。

 私は今年で58歳。あと2年で還暦を迎えます。30年前の20代のころは、いまの自分をある程度イメージできましたが、これから先の30年は、正直、どうなるか想像ができません。ずっと俳優を続けているかもしれないし、そうでないかもしれない。いずれにせよ、心掛けたいのは「元気でいること」です。元気とは、気力があるということ。そして、それを決めるのは健康診断などの数値ではなく、自分自身の気持ちだと思っています。元気な毎日をおくるためには、「何をどのくらい食べたか」よりも、「何を食べたいと思ったか」を大切にして、気力を保っていきたいですね。

中井貴一 (なかいきいち)
1961年9月18日生まれ。東京都出身。1981年東宝映画『連合艦隊』でデビューし、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。83年には、大ヒットドラマ『ふぞろいの林檎たち』シリーズに出演し人気を博す。その後、映画『四十七人の刺客』『亡国のイージス』や、ドラマ『武田信玄』(NHK大河)『最後から二番目の恋』『記憶』など数々の作品に出演。映画『壬生義士伝』(2003年)では、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した。

 

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