都内の名処

シニアライフ・コンシェルジュが案内する都内の名処⑧

都内の名処

CHAPTER8 我が国初の女性作家の生涯を知る 一葉記念館

東京に観光名所は数あれど、あまり知られていない穴場スポットは数多く存在します。そんな「都内の名処」を、シニアライフ・コンシェルジュ藤野政史がご案内します。
今月は、明治の時代を生きた女流作家・樋口一葉の業績を称える「台東区立一葉記念館」に出掛けてみましょう。


瀧澤康裕画「仕入帰りの一葉」。
龍泉寺町で商売を営んでいたとき一葉は仕入れを担当。館内には仕入れ帳も展示されている。

たけくらべと縁深い竜泉の地

 肺結核によってわずか24歳と6カ月という短い生涯を終えながら、「たけくらべ」をはじめとした多くの作品を送り出した小説家の樋口一葉(ひぐちいちよう)。彼女の記念館が、台東区竜泉の閑静な住宅街にあるのをご存じでしょうか。格子塀が特徴的な建物は、モダンでどこか和を感じさせるしつらえ。記念館内部は3つの展示室とギャラリー、ライブラリーから成り、直筆原稿や書簡類などの貴重な資料が展示されています。記念館と一葉の生涯について、専門員の近藤さんと共にご案内しましょう。
「一葉は、いまで言う都庁の職員だった父・樋口則義と母・多喜の次女として現在の千代田区に生まれ、文京区本郷の法真寺前の大きな屋敷で幸せな少女時代を過ごしていました。ところが17歳のときに父親が他界し、戸主として母と妹を養うために生活苦との闘いが始まります。一葉が小説家としての素養を身につけたのは、父親がまだ元気だったころに通った中島歌子の歌塾「萩(はぎ)の舎(や)」でした。ここで一葉は、和歌、書、古典文学を学びます。代表作の「たけくらべ」を朗読すると、非常にリズミカルだと感じるのではないでしょうか。これは五七五七七のリズムを刻んでいるからで、萩の舎で習った和歌の教養が小説に生きているのです」と近藤さん。

一葉が生きた証を知る展示物


一葉の小説でもっとも長い「たけくらべ」の未定稿。達筆で知られる一葉だが、この下書き原稿には苦悩のあとが見て取れる。一説によると源氏物語の世界を竜泉に持ってきたのが「たけくらべ」であるとも。

 一葉は萩の舎でさまざまな文学の素養を身につけ、それと同時に売文業で身を立てようと決心します。同じ萩の舎で学ぶ名家の令嬢・三宅花圃(みやけかほ)が、小説を書いて原稿料円20銭(現在の約40万円)を得たということを耳にし、すでに戸主として奮闘していた一葉は小説家を志すようになったのです。そして半井桃水(なからいとうすい)が主宰していた同人雑誌『武蔵野』に処女作「闇櫻(やみざくら)」を発表。こうして順調に小説家への道を歩み始めたかのように見えた一葉ですが、21歳のときに現在記念館がある吉原遊郭近くの下谷
龍泉寺町に移り住み、荒物駄菓子店を始めます。わずか10カ月で店はたたみましたが、山手育ちだった一葉はこの地でカルチャーショックを受け、人間観察を通じて多くの小説のヒントを得ました。なかでも名作「たけくらべ」は、龍泉寺町での経験がなければ生まれなかったのではないかとも言われるほどで、以降亡くなるまでの14カ月の間に「大つごもり」「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」といった後世に残る作品を次々と発表したのです。
 短命でありながら、亡くなる年に代表作「たけくらべ」を完成させ、森鷗外(もりおうがい)をも唸らせた一葉。男尊女卑であった当時の封建社会のなかで、女性が社会に進出するきっかけを作り、女性としては神功皇后(じんぐうこうごう)以来2人目の日本紙幣の顔となったことが、彼女の功績を物語っています。ここへ来ると、一葉が懸命に生きた24年という歳月に想いを馳(は)せずにはいられません。


一葉が愛用していた黄八丈の胴着。豪華な晴れ着の門人たちが集うなか、貧しい一葉は初めての発表会で着丈の合わない着物姿だったが、作品「月前柳」で最高点を取り古着の引け目をはねのけた。

藤野 政史さん藤野政史(ふじのまさふみ)
グローバルライフ株式会社 代表取締役
シニアライフ・コンシェルジュ
シニア世代の皆さまが楽しく、笑顔で、遊び、学ぶ、集う会
「グローバルライフクラブ」を運営。
 

 

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