コラム

命涯(かぎ)りあり知は涯りなし⑨

命涯りあり知は涯りなし

人にはそれぞれの生き方があり、人生にはドラマがある。私もいつの間にか86歳になった。
ふと、あと何年生きられるかと思うことがある。必死に生きてきた私の半生を書いてみたい。

⑨ 講演依頼から自分自身も学ぶ

 敗戦後、台湾引き揚げから間もなく両親を亡くした私は、昼間は薬局で働きながら高校の夜学を卒業した。そして昭和32年4月、一般社団法人倫理研究所へ入所。先輩K先生のかばん持ちからスタートして、朝礼の資料『十分間の教養集』(のちの『職場の教養』)を手掛けた。

増える講演依頼

 平成2年に法人開発局企画部長になった私は、その後、月刊誌の『新世』などの編集に携わり、平成5年常任理事・出版局長に就任。
併せて新世書房専務理事に就任。単身赴任生活12年が始まった。
 そのころになると外部からの講演依頼が多くなったが、自分の勉強のためにも喜んで出席し、ときには感謝状をいただくこともあった。
 平成6年8月25日には千葉県千倉警察署にて「警察職員の人格の養成と警察力の強化に協力された功労をたたえて」という感謝状をいただいた。
 これを機に、千葉県市原刑務所より講演の依頼があった。依頼趣旨の一部を紹介すると、
(前略)当所では受刑者の釈放(しゃくほう)に際し、改善更生の意欲を喚起(かんき)し、2度と同じ誤りを起こさない心構えの総仕上げをすべく、釈放前教育を実施しております。
 つきましては、釈放前教育に講師をご派遣いただき、交通事犯の遠因に至るまでの核心を突いた洞察と指導、また長期的視野にわたる生活改善の具体的なご提示によって、釈放者の未来の更生にご尽力いただくことを切に希望し、本状をお送りする次第です。
 貴倫理研究所に置かれましては、純粋倫理の普及により多数の会員の生活改善の実効と実績を積み重ねておられるよし、その一端なりと釈放前教育においてご披瀝(ひれき)いただき、向後の交通事故の減少に一助をいただければ幸いに存じあげます。
 なお、平成8年2月から毎月1回、貴所研究員の講師ご派遣について、ご配慮を賜(たまわ)りたく御依頼申し上げます。(交通費のみで無報酬)
 実に丁寧な講師派遣の依頼に、私は毎月1回(1年間)楽しみに伺うことにした。

千葉県市原刑務所処遇の方針

 交通事犯受刑者として贖罪(しょくざい)感に根ざした人命尊重と遵法精神の涵養(かんよう)を処遇の基本方針としている。
 そのために、開放的な環境(五万坪)のなかでの規律正しい生活を通じて、自主・自立の精神を体得させ、同時に交通犯罪に対する道徳的な反省を積極的に促し、法を守り、人命を尊重し、安全第一を信条とする社会人を育成することを目標とする処遇を行っている。
 1年後の受講感想文を一部紹介すると、
◇K・S(24歳)
 先生の話を聞いて、自分は甘えていることが多いんだなと、つくづく思いました。反省のひと言につきます。人間同じ過ちを繰り返すのは、そのことに対する反省の念がないためで、深く反省していれば同じことを繰り返さないですむことを知り、改めて決意しました。
◇T・I(24歳)
 自分も事故を起こしたことなど、いまからよく考えてなんで酒を飲んで車を運転したのかじゃなくて、どうしてこうなったのかをよく考えて、これからの残り少ない受刑生活を有意義にしていきます。
◇M・K(29歳)
 これからはとても長い長い道のりです。一歩一歩しっかりと踏みしめて歩いていくには、うかれたり、もののはずみでなどと軽率な行動や発言をせず、何事もよく考えてから実行に移すことを忘れなければ、どんな坂道で、背負ったものが重くとも踏み外すことなく確実に山は登れると信じます。頑張ります。
 K・Y(27歳)、Y・K(48歳)
からも「後悔より反省」の重要性と再認識について心打たれる決意文を拝見した。
 市原刑務所長からの礼状には、 受刑者の多くは、「倫理」の大切さを改めて認識し、温かい心のこもった精神が人間関係に信頼を生み、社会生活の潤滑油の役目を果たすということを理解したものと確信しております。
 おかげさまで受刑者も出所後の「甘えをなくす」との目標ができたと申しております。これもひとえに先生のご講義の賜物(たまもの)と感謝申し上げます。

 ご丁重な礼状から、私自身がどんなに励まされ、学ばされたかを体感し、この仕事の有益性に深く感謝することができた。
 平成10年1月23日、埼玉県東入間警察署での講演では「あなたは警察活動に深い理解を示され署員に倫理教養を実施して警察に協力されました」という感謝状を署長・警視からいただいた。
 平成10年2月7日には、第67回熊本県公立小中学校教頭会の総会(700名)で「『そだつ』という演題でご講演いただき心の教育、家庭教育について学校の道徳教育に多大の示唆(しさ)を与えてくださいました」という感謝状を会長からいただいた。
 このときの講演では、家庭教育の重要性をはじめ、貧乏は決して恥ではない、子育ての基本は夫婦の連携プレー、自信をもって育てる――など、男ばかり6人の子を苦労して育てた私の体験を具体的に話した。

木村重男さん木村重男(きむらしげお)
1933(昭和8)年生まれ85歳
一般社団法人倫理研究所 参与。
文部科学大臣から社会教育功労賞を受賞。著書に『夫婦の玉手箱』『豊かな人生を拓く玉手箱』など多数

 

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