コラム

【最終回】精神科医が教える「がんばらない老後」のすすめ④

がんばらない老後

日本人の平均寿命はぐんと伸びました。「定年」や「子の独立」は人生第二のスタート地点。
のんびり手を抜いて、自分自身のために気楽に生きはじめましょう!
少し適当でストレスのない「第二の人生」の楽しみ方を精神科医が伝授する最終回です。

頑張って孫にお小こ遣づかいをあげる必要はない

 ラジオの悩み相談室で、ある女性がこんな相談をしていました。「実は、今年から幼稚園にあがる孫がいるんです。娘の子でして、いままでは、会いに行くときにちょっとした玩具(おもちゃ)なんかを買って持っていきました。でも、幼稚園となると好みも変わるだろうし、お金をあげたほうが、好きなものを買えるかなって思うんです。お小遣いの相場なんですけど、どれくらいがいいんでしょうか」
 このとき回答者は、「娘さんは生活に困っていらっしゃるんですか」と逆に問いかけました。すると、その女性は、「いいえ、とくに裕福ってわけじゃありませんけど、連れ合いのお給料で親子3人、何とかやっています」「では、何のためにあなたが玩具やお金をあげるのでしょうか」「孫は可愛いし、好かれたいって気持ちがあるからですけど……」「もし玩具やお金をあげるのをやめたら、お孫さんはあなたのことを嫌いになりますか」
 そこまで言われた女性は少しムッとしたのか、「うちの孫はそんな子じゃありません。私が行くだけで喜んでくれます!」そう声を荒らげて答えました。すると回答者は、「それならもう、玩具やお金をあげる必要はありませんよ。お金があり余って困っているのならあげても構いませんが、もっと別のものをあげればいいじゃないですか」とアドバイスしたのです。

お金よりも素敵なプレゼント

 その後、回答者が女性にしたアドバイスを要約すると、次のようなものでした。
 そのまま玩具やお金をあげることを習慣づけてしまえば、孫が小学校高学年になるころには、「おばあちゃんとお金」はワンセットとして見られるようになってしまう。孫にとってお金をもらうことは当たり前になっているので、もし、何かの理由で生活が苦しくなっても、孫の喜ぶ顔見たさにがんばって小遣いをあげ続けるようになる。
 さらに、「おばあちゃんとお金」はセットなので、ついふらっと遊びに行きたくても、お小遣いをあげる余裕がなければ敷居が高くなってしまう。仮に手ぶらで娘宅を訪ねたとしても、「ごめんね、今日はちょっと来ただけだから、お小遣いはないのよ」と、悪いこともしていないのに孫に謝るようなことになってしまうし、そのときに孫に舌打ちでもされたら踏んだり蹴ったりである。しかし、最初からお金をあげたり玩具を買ってあげる習慣をつけなければ、純粋におばあちゃんが会いに来てくれたのを喜んでもらえる。孫が幼稚園にあがる前がお小遣いをあげるのをやめるチャンス。もしお金をあげたいのなら、孫ではなく、娘にあげたほうが喜ばれるし、無駄にならない。
 というような内容でした。
 しかし、その女性は、「でも、私としては初孫だし、何かしてあげたいんですよね」と煮え切らない様子です。すると回答者は、「それなら、毎回何か思い出に残ることをしてあげたらいいじゃないですか。これはあくまで一例ですが、会うたびに絵本を読んであげるのはどうでしょうか。小さな子はお話を読んでもらうのが大好きですし、お孫さんの感受性を育てるという最高のプレゼントになると思いますよ」
「絵本を買ってあげるなら、玩具をあげるのと同じじゃないですか」「いえいえ、買ってあげるんじゃありません。絵本は図書館から借りたものでいいんです。図書館には書店以上にいい絵本が揃っています。何を選んでいいのかわからないときは、図書館司書が相談に乗ってくれます」「そうなんですか……。でも、何度も読みたがったらどうするんですか」「何度でも借り直して読んであげてください。図書館なら一銭もお金はかかりませんし、そのうえ大きくなってからも、ずっとずっと心に残る思い出をプレゼントできるんですよ。すばらしいことじゃないですか」
 それを聞いた私は「なるほどな」と思いました。たしかに、お年玉やお小遣いはもらったときはうれしくても、それを使ってしまえばうれしかった気持ちも消えてしまうものです。しかし、近所のお兄ちゃんやお姉ちゃん、年長のいとこに遊んでもらった思い出は色あせることがありません。それどころか、年を重ねるほど鮮明に蘇よみがえったりするものなのです。
「愛はお金で買えない」といいますが、最近は愛情をお金で表そうとする人が増えています。ちょっとした工夫があれば、お金や物よりも素敵なプレゼントができることを忘れないでください。

保坂 隆(ほさかたかし)
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。聖路加国際病院・診療教育アドバイザー。1952年、山梨県生まれ。
慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授、聖路加
看護大学臨床教授、聖路加国際病院精神腫瘍科部長、リエゾンセンター長などを経て、保坂サイコオンコロジー・クリニックを開業。

書籍紹介
精神科医が教える「がんばらない老後」のすすめ
著者:保坂隆 発行:廣済堂出版 価格:1,100円+税
仕事や子育てを一生懸命がんばってきた方々へ。老後はあまりがんばらず、少し気ままにのんびり手を抜いて、楽しく生きよう!
ストレスのない「第二の人生」のすごし方。人間関係、お金、物、家事などをちょっぴり適当に。無理せず快適に暮らすおすすめ生活スタイルや、適度な力の抜き方を紹介。

 

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