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知っておきたい「先進医療」の基本

先進医療の基本

「先進医療」は高度な医療技術のことで、厚生労働大臣によって定められています。公的医療保険の対象にはなっていませんが、有効性や安全性については一定の基準を満たしており、がん治療や白内障手術などで用いられています。
 特定の医療機関でないと研究や開発ができないため誰でも受けられる医療ではありませんが、どのような治療があるかを知っておけば、必要なときの備えになります。
 現在、先進医療を受ける人は年間3万人を超え、年々増加傾向にあります(※1)。今月は、年間実施件数が1万件を超える「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」を例に、先進医療の基本情報をお伝えします。

※1 厚生労働省「平成29年度(平成28年7月1日~平成29年6月30日)先進医療の実績報告」より

●お話を伺った方
徳田 芳浩(とくだよしひろ)先生
井上眼科病院 副院長
公益社団法人 日本白内障屈折矯正 手術学会 理事長

高額な「先進医療」事前に把握しておくこと

先進医療を受ける際、気になるのが治療費です。その費用について詳しく紹介します。

がん治療にかかわる先進医療が多い

 厚生労働省によると、2018年12月31日現在の「先進医療」の数は91種類。新たに承認追加される技術や、何かしらの要因で外れる技術もあり、厚生労働大臣に承認される先進医療の数は随時変動しています。
 先進医療では、がん治療に関わる技術が多く、外科療法や放射線療法、移植・再生療法のほか、抗がん薬などの薬物療法、免疫療法などさまざまです。がんの代表的な先進医療技術として知られるのが、「重粒子線治療」や「陽子線治療」です。ただし、特定の医療機関でないと受けられなかったり、技術料が高額であったりすることなどから、年間の実施件数はそれぞれ1558件と2319件で、それほど多くはありません。
 先進医療のなかで受ける人が多いのは「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」で、年間実施件数は14433件となっています。
「白内障は命に関わる病気ではないものの、視力の低下は生活の質(QOL)に大きく影響します」と徳田先生は言います。

「先進医療」と「保険診療」の違い

 先進医療は保険診療とは異なり、技術料は全額自己負担となります。ただし、手術前や手術後の診察、検査、投薬、入院代などは保険診療の対象となります。
 例えば、総医療費が100万円で、そのうち先進医療にかかる費用(技術料)が20万円だった場合、残りの80万円が公的な保険の適用
範囲となります。これにより80万円の3割(※2)にあたる24万円の負担で医療を受けることができ、実質的な自己負担額の合計は44
万円になります。
 ちなみに、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術の平均技術料は、約55万円といわれています。
 ただし国内未承認の多焦点眼内レンズを使用する場合は自由診療となり、全額自己負担となります。 
 民間の医療保険に加入している方で先進医療特約を付帯している場合は、先進医療にかかる医療費が全額給付されることもありますので、ご自身が加入している医療保険を確認してみましょう。

※2 医療費の自己負担割合は年齢や所得により異なります。6歳~70歳未満は3割負担となります。

白内障治療の先進医療「多焦点眼内レンズ」

80歳を超えると、ほぼ100%の人が発症する「白内障」。しかし技術の進歩により、いまや手術で治せる老化現象です。

2カ所にピントが合う「多焦点眼内レンズ」

 先進医療のなかでも受ける人が多い「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」とは、どのような技術でしょうか?
 徳田先生によると、「白内障によって濁(にご)った水晶体を超音波で取り除き、代わりとなる眼内レンズ(人工水晶体)を挿入する手術で、遠くか近くの1カ所にピントを合わせる「単焦点眼内レンズ」ではなく、遠くと近くの2カ所にピントを合わせる「多焦点眼内レンズ」
を用いた術式のことです。白内障の治療とともに、日常生活においてメガネの使用頻度を減らすことが可能となり、メガネから解放されたいという活動的な方が適応となる先進医療です」。
 2008年に先進医療として承認され、当初の実施件数は2159件だったものの、2016年度には1万件を超えました。
「手術の所要時間は10分~20分程度で、傷口が小さく負担も少ないため、入院の必要はほとんどありません。手術当日は眼帯をしたまま帰宅しなければならないうえ、術後の通院も必要ですが、ほとんどの方は翌日には見えるようになります」(徳田)。
 ただし、多焦点眼内レンズが「向く」「向かない」といった適応もあります。また、「多焦点眼内レンズ」=「老眼が治る」と勘違いする人がいると徳田先生は指摘します。
「遠方と手元の2点にピントが合うものであり、すべての距離にピントが合うわけではありません。あくまでも白内障治療の1つのオプションです。白内障ではないにもかかわらず、老眼治療のために手術を受けることはお勧めできません。また、遠くと近くのピントが同時に合うことに違和感を持ったり、夜間に光が滲に じんで見えたりすることもあります」。
 レンズにもいくつか種類があり、国から認可されているもの、されていないもの、焦点距離やコントラストの感度にもそれぞれ違いがあるそうです。
「眼内レンズはメガネと違って事前に試すことができません。自分に適応するかどうか、日常生活や仕事、趣味などを考慮し、医師と相談することが重要です」(徳田)。
 厚生労働省によると、「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」を実施している医療機関は、全国で839施設あります(平成31年1月1日現在)。多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が気になる方は、まずは主治医に相談してみましょう。

 

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